【Action】世界は苦難に満ちている。また、それを乗り越えることにも満ちている。Ori and the Blind Forest(オリとくらやみの森) レビュー【Xbox One/PC/Switch】
「Ori and the Blind Forest(オリとくらやみの森)」★★★★★
オーストリアのデベロッパー、Moon Studiosが開発した正真正銘の神ゲー「Ori and the Blind Forest(オリとくらやみの森)」をクリアしましたのでレビューします。
すでに2015年に発売されていたタイトルですが、恥ずかしながら完全にスルーしておりました。
昨今の巣ごもり対策として、たまたまグラフィックに惹かれて購入した次第。
ちなみに今回プレイしたのは「Ori and the Blind Forest: Definitive Edition(完全版)」です。
(2020年4月現在、Xbox One、PC、そしてNintendo SwitchにてDL販売されていますので、PS4ユーザーの方はご注意ください。)
1.高精細なグラフィックがもたらした幻想的な世界観
ゲーム自体は3D横スクロールアクションの典型的なタイプです。
この手の作品は枚挙に暇がなく、Xbox Live Arcadeにおいては、過去にも「Braid」や「Splosion Man」「Shadow Complex」「LIMBO」「Deadlight」など、個性的な傑作が数多くリリースされています。
上記に挙げた傑作の特徴としましては、やはり世界観の作り込みに開発側が相当な心血を注いでいるという点があります。
この「Ori and the Blind Forest」(以下、オリ)も例外ではなく、冒頭のイントロダクションからグイグイとプレイヤーを引き込んできます。
舞台設定としては所謂「ロストワールドもの」であり、森林地帯が主なフィールドとなりますが、光源の処理や奥行きの表現力には本当に感服いたしました。
水の表現はもちろん、細部まで描き込まれた背景の1つ1つに開発者の熱意を感じます。
例えば、ねるとん紅鯨団的に言えば「第一印象から好きでした。」っていうぐらいの引きの強さ。
世代がバレちゃいますけど、それぐらいの好印象を抱かせるグラフィックでした。
2.北欧由来のファンタジーを体現した全編フルオーケストラのBGM
アクションゲームとしての品質を語る前に、まずは音楽の話からさせてください。
本作ではフルオーケストラのBGMとなっており、そのクオリティの高さは改めてここで言うまでもありません。
各楽曲も、北欧らしい牧歌性と荘厳さを兼ね備えた美旋律の嵐に、ただただ心を打たれます。
差し詰めこれは、国産のゲーム系サウンドトラックとは微妙に異なる味付けです。
日本の場合はジブリであるとか、ゲームだとFFやDQであるとか、子供の頃からファンタジー系のエンタメには親しんでおりますよね。
そこでは久石譲や植松伸夫、すぎやまこういち、そして光田康典など、著名な作曲家による音楽のおかげで、作品に奥行きが与えられています。
オリに関しても同じくですが、ここで奏でられる音楽は日本の作曲家とは一味も二味も違いますね。
生まれた土地が違えば、その趣味嗜好や文化が異なるのは当然ですから、サウンドプロデュースにも違いが生じるのは至極当然の話。
ぜひこの文化の違いを、オリの音楽からも感じて頂ければと思います。
(サントラを担当したGareth Cokerはイギリス出身の35歳。)
3.絶妙なさじ加減でプレイヤーを虜にする”死にゲー”アクション
誤解を恐れずに言えば、本作に登場するギミックのほとんどが「初見殺し」です。
死にゲー、と呼んだ方が適切でしょうか。
ただ、ロックマンや魔界村のような一般人を寄せ付けない難易度というわけではなく、何度目かのトライ&エラーで必ず克服出来るような、絶妙なさじ加減のゲームバランスに仕上がっています。
(僕はこの点を強調したくて、記事タイトルにヘレン・ケラーの名言を添えました。)
特筆すべきは、成長要素の存在です。
ゲームの進行に合わせて、スキルアップとして様々な恩恵がプレイヤーにもたらされることで、攻略の幅がどんどん広がっていきます。
3D横スクロールアクションというジャンルにおいて、こうしたRPG的な味付けを施しているのはなかなか珍しいのではないでしょうか。
ただ、国産ゲームに慣れた我々にとって、ボス戦らしいステージがほぼ皆無であることは、どうしても食い足りなさが残ります。
特に任天堂やカプコン製の場合、ボス戦に向けて少しずつボルテージを引き上げ、アイテムやスキルなど準備が揃ったところで初めてボスと対峙するという、一連の流れが定番として存在します。
これは、プレイヤーがボスを倒すことで得られるカタルシスを重視しているからです。
ところがオリの場合はその思考から少し脱却していて、あくまでも横スクロールアクションの過程において、つまり通常マップの中でプレイヤーにカタルシスを与えようとしています。
従って、派手なボス戦などは用意せず、デティールを追求したマップ構造で起きるシークエンンスに全精力を傾けているのです。
前半のハイライトでもある、水が下からせり上がってくる場面などは象徴的で、このシークエンスだけ見ても、オリはアクションゲームにおけるカタルシスの新境地を切り開いたとも言えるでしょう。
4.まとめ
正直言って、文句なしの神ゲーですね。
参りました、あっぱれです。
僕がゲームを評価する時の5つの要素においても、その全てが高水準。
(世界観の作り込み、魅惑的なストーリーライン、直観的な操作性、リプレイ性に富んだゲームデザイン、キャラクターの魅力、以上5つの評価ポイント。詳しくは以下の記事をご覧ください。)
クリアまでは約20時間ぐらいかかりますので、ボリュームも十分です。
(ちなみに、トゥームレイダーのストーリーキャンペーンが約20時間程度。)
気になる難易度もイージーから選べますし、そもそも死んで覚えることを前提とした作りですから、心ゆくまでトライ&エラーを楽しんで欲しいですね。
僕もゲーム内達成度は100パーセント、実績は985まで解除出来ました。
アクションゲームは苦手ですが、不思議と心が折れるってことはなかったです。
すでにご存知の方も多いと思いますが、続編(Ori and the Will of the Wisps)が今年になってリリースされました。
前作が2015年ですから、相当な時間をかけて完成に至った模様です。
もちろん、筆者もすでにプレイリストに待機中なので、クリアした際にはまたレビュー出来ればと思います。
とはいえ、もう少し本作の余韻に浸っておきたいかな。。。
何はともあれ、未プレイの方は以下の動画をぜひチェックしてみてくださいね。
巣ごもり対策としても、きっと満足して頂けるのではないかと確信しています。
総合評価:97点