【TPS】このろくでもない素晴らしき世界。Days Gone レビュー【PS4】
私事ですが、最近はなかなかゲームクリアまで到達することがありません。
昔は実績解除の為に、それこそ生きるか死ぬかという気概を持ちつつ、夜な夜な攻略に勤しんだものですが、そんな気力や体力はとうに尽き果ててしまいました。
FPSのオンラインマルチなんて全くやる気が起きないですね。。。
そもそも時間がない、という話はさておき。
「Days Gone」★★★★★
そんな自分にとって、久しぶりに血沸き肉躍る体験となったのが、本作「Days Gone」であります。
この作品は良いですよ。
オフラインでちまちま遊べますし、そもそものコンセプトがめちゃくちゃ良い。
ウイルスによるパンデミック後の世界を描いていますが、アメリカという国が抱える病巣、そして正義と不道徳が表裏一体となったテーマに、これでもかっていうぐらいハマりました。
今は難易度を上げて2周目をプレイ中ですが、総プレイ時間は軽く50時間を超えています。
僕にとって50時間を超えて遊んだゲームというのは過去にも数作しかありません。
そのため、本作が数年に1度出るか出ないかの傑作であること、これをまず最初にお伝えしておきたいと思います。
内容に入る前に、ひとまず僕がゲームを評価する上での指針を明記しておきます。
最初にこの指針を伝えておかないと、なぜ本作が素晴らしいのかという真意が伝わらない恐れもあるからです。
大別して、以下の5つが僕の評価ポイントとなります。
(点数で評価する場合は、各項目それぞれを20点満点として考課します。)
言うまでもなく、ゲームは映画ではありません。
プレイヤーが自ら操作して苦難や課題を乗り越えた先に、スキルアップやアイテムなどのインセンティブが用意されている、ある種の等価交換を基軸としたエンタメです。
映画の場合はひたすら鑑賞するだけですから、観客は常に受動的であるのに対し、ゲームはプレイヤー自ら能動的かつ主体的に取り組めるものです。
このため、操作を必要としないカットシーンが多くなればなるほど、途端に「ムービーゲー」と揶揄されるような事態が引き起こされます。
・ムービーゲーとは、ビデオゲームにおいてゲーム内のカットシーンもしくはムービー(動画)が多いゲームを指してコミュニティ間で呼ばれている俗称。
・極端な例ではカットシーンやムービーをスキップせずにプレイした場合、プレイ時間の三分の一がムービーとなったという話も存在するという。
僕自身、ムービーの多いゲームはあまり好きではありません。
そもそもが映画やドラマではないのですから、ゲーム開発者はプレイヤーの操作が及ぶ範囲で当該の趣旨を伝えるべきです。
少なくとも、2000年代以降に「GTA」を起因とする自由度の高さがゲーム市場で支持されてきたのも、その辺に理由があるのではないかと思います。
(単純な比較として、ムービーゲーは国産ゲームに多い傾向があります。)
では早速、「Days Gone」の素晴らしさとは一体何か、語っていきましょう。
せっかくですから、上に挙げた僕の評価ポイントに沿って、感想を投下していきますね。
1.ポストアポカリプスという世界観
これはゲームに限った話ではありませんが、ポストアポカリプスという舞台設定は手垢のついたテーマです。
ゲーマーである皆さんには、すでに「Fallout」シリーズがポストアポカリプスの金字塔的存在にもなっていて、どうしてもそちらと比べてしまう向きもあるでしょう。
特に「Fallout 3」が提示したような、都市部における荒廃した終末的世界観は、今なお色褪せない輝きを放っています。
Fallout 3(フォールアウト 3): Game of the Year Edition【CEROレーティング「Z」】 - PS3
- 作者:
- 出版社/メーカー: ベセスダ・ソフトワークス
- 発売日: 2009/12/03
- メディア: Video Game
Fallout 3(フォールアウト 3): Game of the Year Edition【CEROレーティング「Z」】 - Xbox360
- 作者:
- 出版社/メーカー: ベセスダ・ソフトワークス
- 発売日: 2009/12/03
- メディア: Video Game
その一方で、「Days Gone」の舞台はアメリカ合衆国のオレゴン州ということで、ビルが乱立するような都市部が一切出てきません。
自然豊かで長閑な風景が延々と続き、建物といえば、時折ガソリンスタンドやキャンプ場のバンガロー、それから小さな田舎集落が点在するくらいです。
オレゴン州と言えば「全米住みたい街No.1」のポートランドという街がありますけど、そんなデカい市街地も一切出てこない。
めっちゃ自然=めっちゃアウトドア、そんなフロンティアな箱庭なのです。
これってね、僕は新しいと思ったんですよ。
例えば田舎道をドライブしている時に見かける、今にも崩れ落ちそうな廃家、そして展望台にある寂びれた公衆便所、はたまた湖の岸辺に建つボート小屋、、、そんな場所にゾンビがうめき声をあげながら徘徊しているという、まさに非現実な状況。
しかしこれは、ともすると自然との調和という側面もあるのではないでしょうか。
(ゾンビという「生き物」が暮らす自然に、プレイヤーが身を置けるという意味で。)
普通は退廃性を真っ先に描いて当然なのに、あえて美しい景観を舞台としたところに、既存のポストアポカリプス思想に一石を投じたと言いますか、むしろ僕は開発者のチャレンジ魂をビンビンに感じたぐらいです。
さらに天候や四季の概念もふんだんに取り込まれておりますから、そのグラフィックの良さとも相まって、十二分にリアリティを発揮していたことも付け加えておきます。
2.時間軸を交錯させたストーリーライン
本作は、主人公ディーコン・セントジョンの精神的、肉体的成長を主軸に、正義とは何かという大きな主題を内包しています。
例えば「Fallout」や「ウィッチャー」のように、その都度プレイヤーに選択肢が与えられるタイプのゲームではありません。
ストーリーは一本道であり、箱庭ゲーらしく、メインクエストとサブクエストをこなしていきます。
主人公ディーコンの行動は、その外見とは裏腹に、極めて道徳的で紳士的な男です。
つまり、洋物RPGにお馴染みの「悪人プレイ」を試せる環境ではなく、この点については自由度が低いという批判の声もあるでしょう。
他方、そのストーリーラインは時間軸を交錯させたもので、映画で言えばタランティーノ的(もしくは黒澤明的)な演出効果を狙っています。
これにより、主人公ディーコンの人間性が徐々に露わとなっていき、中盤からの怒涛の展開には誰もが目を離せなくなります。
そうなんです。
このゲーム、序盤こそスロースタートで散漫な印象を受けますが、総じて昨今のアメリカンドラマを見ているような、スリリングでミステリアス、そしてクリフハンガーな気分を随所で味わえちゃうんですね。
(例えば「ウォーキング・デッド」との共通点を見出す面白さもあると思います。)
個人的には、敵を騙して潜入捜査するというプロットが昔から大好きなものですから、本作のシナリオは楽しめました。
映画だと「レザボアドックス」「ハートブルー」「フェイク」「インファナル・アフェア」、それから「ワイルド・スピード」などが潜入捜査系の代表作品ですよね。
バレたら殺られる、、、!的な焦燥感が好きな人には、たまらないものがあるでしょう。
3.親しみやすい操作性
本作のプレイヤー視点はTPSとなっており、すでにゲームに慣れている方には一貫して親しみやすい操作性です。
若干の慣れが必要なのは、武器やアイテムの選択に使用するコントロールリングでしょうか。
しかしこれ、プレイヤーが選んでいる間は周囲の時間が遅くなるというオマケ付き。
これにより、コントロールリングの多用で難易度が下がっているのでは?というチート的な側面も見逃せません。
総じて、本作はユーザーフレンドリーな設計が目立ちます。
これも過去の名作である「ザ・ラスト・オブ・アス」や「ダイイング・ライト」からの引用とアレンジの結果と言えるのではないでしょうか。
むしろ上記2作品をすでにプレイ済みの方にしてみれば、本作の快適な操作体系には異論なく納得して頂けるはず。
特にTPSの視点はステルス戦闘との相性が抜群に良いですよね。
「メタルギア」や「スプリンターセル」が好きな方には説明不要ですけれども、本作ではステルスも戦略として重要視されていますから、少人数戦では多くの方がTPSの恩恵に与るところでしょう。
ゲーム市場では、すでに「ディスオナード」という作品におきまして、FPSの視点がステルスには向いていないということが実証されていますからね。
(あくまでも、自社調べ。異論は認めます。)
ちなみに僕が最も評価しているステルスゲームは「スプリンターセル・コンヴィクション」と「バットマン・アーカムアサイラム」であり、どちらも発売からすでに10年を経てもなお、生涯ベスト10に入るほどの傑作であると確信しております。
特にバットマンは極めて著名な存在なので、ここで説明するのもおこがましいのですが、専ら象徴としての士(サムライ)であることが、日本人の我々にも親近感を抱かせていると思います。
僕の好きな書籍に「士(サムライ)の家に生まれたる者のなすべきは、お家を守る。これに尽き申す。」という言葉があるように、バットマンはウェイン家の当主であり、自分の家を守ることが、結果的にゴッサムシティの治安を良くすることに直結しています。
また、不必要な殺傷を行わず、敵には恐怖と懲罰を与える正義の存在として君臨しているところに、因果応報の勧善懲悪ドラマが見事に成立しているわけであります。
4.血沸き肉躍る戦闘の楽しさ
さて、ゾンビゲームにおいて、戦闘シークエンスの重要性は今ここで語るまでもありません。
本作はTPSという視点のメリットを生かし、豊富な武器とアイテムでバラエティ豊かな攻略をプレイヤーに提供しています。
過去の名作を参照するのであれば、銃撃なら「Left 4 Dead」、ステルスなら「ザ・ラスト・オブ・アス」、格闘なら「デッド・ライジング」といったところ。
(模倣ではなく、参照という言葉を使っているところに僕の優しさが垣間見えると思います。)
つまり、銃撃、ステルス、格闘、これらが三位一体となっていることと、マップデザインの良さもあり、リプレイに関しては飽きが来ない設計となっています。
対峙する敵もゾンビのみならず、野盗など人間を相手にすることも多々ありまして、場合によっては三つ巴の争いとなることもあり、そこは賑やかに楽しく遊べますね。
唯一の欠点としては、敵AIの賢さに疑念があるぐらいでしょうか。
(ぶっちゃけ、そこは「Gears of War」のAIを参照して欲しかったと思います。)
ゾンビに関しては、集団になるほど凶悪化しますので、武器のカスタムや爆弾作成などの準備を事前に整える必要があり、そのために各所に転がるスクラップを拾うのが日課となります。
こうしたスクラップ&ビルドの思想はゲームとの相性も良く、本作でも上手く機能しているように思います。
また、欠点とするか、それとも必要悪とみなして納得するかは人それぞれですが、格闘に使用する近接武器は耐久度の概念が持ち込まれています。
つまり、一定使用で壊れます。
スクラップを使って修復可能ですが、場合によってはわざと壊してから、新しくカスタムした方が「燃費が良い」ケースもあるので、その辺の取捨選択もプレイヤー次第といったところでしょう。
案外、頭脳戦の様相を呈しているところに、本作の戦闘の面白さがあるとも言えますね。
5.個性的なキャラクター
すでに言及した主人公ディーコンのみならず、妻のサラ、そして親友のブーザーなど、本作では主要登場人物の個性が際立っています。
相対的にNPCの存在感が希薄化されてしまっているのは残念ですけれども、それを差し引いても、本作のキャラの魅力は色褪せません。
加えて、日本語吹替が素晴らしいですね。
実際にプレイして頂ければお分かりかと思いますが、洋ゲーにしては豪華な声優陣をキャスティングしており、これがゲーム自体の世界観にも奥行きを与えているように思います。
僕も映画は字幕派ですけど、ゲームはどうしても操作が必須なので吹替派です。
(「GTA」でもそうですが、車での移動中に延々と会話がある場合、字幕を追いかけながら運転するのは難易度インセインでございます。)
ところで、ゲームや映画というエンタメの世界は、第三者として観察の視点から鑑賞しているという紛れもない事実があります。
先頃、アカデミー賞にもノミネートされた「アイリッシュマン」のマーティン・スコセッシ監督などは、一貫して観察的視点を大事にしている現代の巨匠ですね。
この観察的視点にこそ意味があって、それは「Days Gone」についても同じです。
要するに、映画でもゲームでも、我々は「他人の話」を眺めているわけです。
そこに自己を投影して共感を得るかどうかはまた別の話で、共感を得られなかったから駄作、ということには決してなりません。
本作についても、ハーレーを乗り回す粗暴な主人公、ディーコン・セントジョンに自己を投影して共感することは難しいのですが、観察という視点においては、彼の行動や言動には終始一貫性があり、筋が通っています。
一見して粗暴ではあるけれど、内面は情緒的で優しい人物像であることも描写されますから、不快感は希薄なのです。
恐らくですが、主人公への共感性を取るか、それとも観察性を取るかで本作の評価が分かれそうな気もしますね。
ただ、あくまでもこれはゲーム作品なので、キャラにリアリティがあるかどうかは大きな問題ではなく、そこは映画やドラマとは似て非なるものとして捉えて頂きたいところ。
なぜなら、リアリティを映画やドラマのレベルに引き上げて、人間としての共感性を増やしたところで、果たしてゲームが面白くなるかと言えば、 一概にそうとは言えないと思うのです。
ゲームだからこそ許せる人物像って、あるじゃないですか。
僕はそういうゲームの、ゲームらしい稚拙な部分ってのが好きなんですよね。
6.まとめ
大雑把にまとめますと、映画で言えば「28週後...」じゃなくて「28ヶ月後…」ぐらいの、パンデミックで人間社会が崩壊した後の世界を探索する箱庭ゲーです。
すでに述べたように、一本道のストーリーですし、サブクエストの量も多くはないので、全体の自由度は高くありません。
しかしながら、その景観の良さ、リプレイ性のある戦闘、そしてキャラの魅力もあって、知らず知らずにこの世界での滞在時間が長くなってしまう、そんなゲームとなっています。
それと書くのが最後になってしまいましたが、本作のサントラの出来も非常に素晴らしかったので、BGM好きの方にも自信を持ってお勧めしたいところです。
この「Days Gone」の世界では、パンデミック後に残された人々はそれぞれにコミュニティを作って対立し、または共存し、見方によっては保護主義の終着駅といった現代アメリカが抱える問題も描写されています。
時節柄、日本でも新型コロナウイルスによるパンデミックが懸念されており、まさかポストアポカリプスのような世界にはならないと思いますが、このまま人の往来が制限され、経済活動の自粛とともに貿易さえも縮小されることになりますと、保護主義は自ずと加速度を増すでしょう。
そんな世界が行き着いた先には何があるのか。
本作「Days Gone」は、もしかしてこれから起こり得るかもしれない、人類の未来を如実に描いた傑作なのであります。
総合評価:94点
【PS4】Days Gone ( デイズゴーン ) 【早期購入特典なし】 【CEROレーティング「Z」】
- 作者:
- 出版社/メーカー: ソニー・インタラクティブエンタテインメント
- 発売日: 2019/04/26
- メディア: Video Game