【Electronica】エレクトロ・シューゲイザーの巨匠、Ulrich Schnaussが過去作品を一挙リマスター&セルフリミックス集のおまけつき!
Ulrich Schnauss「Now Is A Timeless Present - A Retrospective」★★★★★
2019年もそろそろ終わろうかというこの年末に、ビッグニュースが飛び込んできました。
ドイツを代表するシンセ職人、Ulrich Schnauss(ウルリッヒ・シュナウス)先生が、過去のスタジオアルバムを全作(!)リマスターしてくれたのです。
タイトル通りに回顧的な試みではありますが、今でも色褪せない傑作揃いですから、界隈では盆と正月が一緒にやってきたようなお祭り騒ぎ。(あくまでも僕の推測。)
とりあえず、今回リマスターされた作品を時系列に並べてみますね。
- 1st Album「 Far Away Trains Passing By」(2001年発表)
- 2nd Album「A Strangely Isolated Place」(2003年発表)
- 3rd Album「Goodbye」(2007年発表)
- 4th Album「A Long Way To Fall」(2013年発表)
- 5th Album「No Further Ahead Than Today」(2016年発表)
1st Album「 Far Away Trains Passing By」(2001年発表)
2nd Album「A Strangely Isolated Place」(2003年発表)
3rd Album「Goodbye」(2007年発表)
4th Album「A Long Way To Fall」(2013年発表)
Long Way to Fall by Ulrich Schnauss (2013-01-21)
- アーティスト:Ulrich Schnauss
- 出版社/メーカー: 1-2-3-4-GO!
- メディア: CD
5th Album「No Further Ahead Than Today」(2016年発表)
Ulrich Schnaussの名義では、これまでに5枚のスタジオアルバムをリリースしております。
間隔にして、約2~4年に1枚ぐらいの緩やかなペースですが、リミキサーとしての活動域も広く、その影響で他アーティストとのコラボ作品も数多く発表しています。
数が多過ぎて本稿では紹介しけれないので、以下の公式サイトにてご確認ください。
最近の活動で特に思い出されるのは、2014年にTangerine Dreamへ加入した件でしょうか。
このときの衝撃は、ファンとしても未だに記憶の新しいところです。
しかも、加入直後にTangerine Dreamの創始者Edgar Froese(エドガー・フローゼ)が死去したこともあり、弥が上にもUlrich Schnaussに注目が集まる結果となりました。
この辺のプレッシャーたるや、素人目にも相当なものだったと推測されます。
(ちなみにEdgar Froeseの遺作となった「Quantum Gate」は巷でも大絶賛されました。)
さて、そんな多忙な日々を送るUlrich Schnaussですが、彼の一体何が凄いのか、ということを改めて明記しておきましょう。
デビュー当時から、彼はシンセサイザーを基軸としたソングライティングを行っていますが、その音楽性は過去のIDM系、いわゆるAphex TwinやBoards of CanadaといったTechno系統のサウンドとは一線を画しておりました。
端的に分かりやすく言えば、シューゲイザーやポストロックといったデジタルからは遠い位置にあったジャンルを、あえてシンセサイザーを用いて表現したということです。
これにより、Electronica調の楽曲にもエモーショナルという奥行きが生まれ、良い意味でサウンドトラック的な、全方位シネマティックな世界観が実現しました。
初期3作のうち、3rd Album「Goodbye」が最も象徴的な作品となります。
ぜひこのアルバムだけでもチェックして頂ければと思います。
1stや2ndでは、The FlashbulbやKettelのような牧歌的Electronicaを彷彿とさせますが、この3rdでは一気にM83的なニューゲイズ系の世界観に傾倒しています。
これを機に巷では、エレクトロ・シューゲイザーという新たなジャンルとして、広く認知されるに至ったかと思います。
(3rdからはVocalがしっかりと楽曲に組み込まれた、というのもあると思います。)
続く4thと5thでは、一転してシンセサイザーに比重を置いた本来のElectronicaへの回帰が見られました。
この辺は本人もインタビューで語っておりましたので、以下に引用します。
特集:ウルリッヒ・シュナウス Special Interview ―「シンセの音楽的な可能性を賞賛する」6年ぶりのソロ新作、これまでの軌跡を振り返る - CDJournal CDJ PUSH
・3rdアルバム『Goodbye』のリリース後、“シューゲイザー”という表現形式でこれまでの焼き直しをせずに表現する方法論が考えつかなくなり、何らかの変化の必要性を感じていたんです。
・最初の3枚ではシューゲイザー・サウンドが非常に大きな要素でした。シューゲイザー・サウンドを、ギターでなくシンセサイザーを使うことによって現代的に再解釈することが大きなねらいでしたね。ぼくはチャプターハウスやスロウダイヴのようなバンドを聴いて育ったし、彼らの音楽の影響は常にぼくの音楽のどこかに出ているんじゃないかと思います。
10代の頃、Rideをヘビロテしながら育った僕としては、エレクトロ・シューゲイザーの路線をさらに追求して欲しかったというのが正直なところです。
それでも4th以降の作品もクオリティは高いですよ。
特に「Negative Sunshine」という楽曲はDeep Tranceにも通じる世界観です。
(これはぜひLive動画でご覧ください。4分ぐらいからの楽曲です。)
最後に、セルフリミックス集のおまけDiscですが、資料的価値に優れています。
しかも今年になって改めてレコーディングを録り直したような表記があるのですが、コレ本当ですか??
仮にもし本当なら、大変レアで面白い企画だと思いますね。
何れにしても、サウンドプロダクションの向上は楽曲の質感さえ高める効果がありますから、おまけというよりはこれが本作のハイライトになるのかもしれません。
改めまして、2020年という節目を目前にして、リマスターという形で再び作品に光を当てたところに、最大級の賛辞を贈りたいと思います。
ありがとう、Ulrich Schnauss!