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The Witcher 3 : Wild Hunt Part-22 (レビュー)

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さて、このプレイ日記も20回を超えてきたので、そろそろ本作の概要なり、緻密に構築された世界観を簡単に解説しておこうと思う。

これから本作を始める方には、前知識として知っておくのもいいかもしれない。

 

まずはじめに、ウィッチャーが何者なのか、という話はひとまず横に置いて、現在のこの世界が置かれている状況というものを把握しておく必要がある。

現在、世界は人間族同士による「第三次北方戦争」の真っ只中にある。

わざわざ人間族と書いたのはもちろん意味があって、数世紀前までこの世界はエルフやドワーフといった非人間族が支配していた歴史があるからだ。

そこに「天台の合」と呼ばれる天変地異的な現象、これは漫画のベルセルクで言えば「蝕」のようなものだと推測するが、これがきっかけで人間族が世界に登場することになり、幾多の種族間の争いを経て、500年前あたりからは人間族の天下となっている。

しかし、現実社会でも同じように、この平和は長く続かず、種族間から人間族同士の民族紛争へと発展し、戦局は過熱する一方。

やがてそれは北方と南方の二手に分かれた世界大戦規模の戦争となり、それが現在の「第三次北方戦争」へと続いている。

ちなみに、南方を支配しているのはニルフガードと呼ばれる帝国であり、領土拡大の為に北方に戦争を仕掛けた張本人と言えよう。

対する北方はレダニアやテメリア、そして本作の主人公の故郷リヴィアなどの小国が連なった諸国連合体であり、しかし戦況は南方のニルフガード帝国に有利な状況だ。 

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本作の開発元がポーランドということもあるが、この辺りの世界観設定は現実のヨーロッパ社会の歴史を色濃く反映している。

マップを見ても、外海や山脈などの遮蔽物に沿って支配地域が個々に形成されており、特に人間族においては異なる言語、異なる通貨、異なる宗教など文化の違いが明確に表現されているのが特徴的だ。

こうした文化の違いが次第に民族紛争へと発展していくのは我々の歴史においても証明され尽くしており、ここに世界平和実現の難しさが垣間見える。

また、信仰や宗教の対立はもちろんのこと、食糧問題に起因する都市間の経済的格差など、そこに鬱積した民衆の不公平感もあり、これを北方と南方の戦争に置き換えて見せた本作の脚本は、グローバル化によって軋む現在の地球の姿をまさしく彷彿とさせるものであり、相応の説得力がある。

南方で勢力を増すニルフガード帝国とは、かつてのローマ帝国とも酷似しており、世界史好きのプレーヤーなら思わず引き込まれてしまうような、ある種魅惑的な舞台設定とも言えるだろう。

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 しかしそれだけではまだファンタジーとは言えない。

ここに非人間族が介在することによって世界はより空想的で魅力的なものとなる。

例えばエルフやドワーフといった非人間的な種族は、すでに人間族に敗北を喫した存在として弱々しく描かれているが、それに比べて怪物と呼ばれる魑魅魍魎のモンスター達は未だに人間族を脅かす存在として各地に生息している。

ここでようやくウィッチャーの存在意義について語ることが出来る。

要するに、ウィッチャーとはRPG世界におけるジョブ、つまり階級職という意味だ。

主人公ゲラルトは人間に危害を加える怪物を退治する者、いわばモンスタースレイヤーとして世界を転々とする傭兵である。

となると並外れた身体能力の持ち主でないと怪物達には勝てるはずもなく、ウィッチャーは厳しい試練と人体改造及び人為的な突然変異を経て一人前の存在となっていく。

ゲラルトは、そんなウィッチャーの中でも「白狼」というあだ名で呼ばれるほど、本作では伝説的な人物として描かれている。

しかしながら、ウィッチャーという職業自体を忌み嫌う人間も多く、その成り立ちからしてミュータントと呼ばれ蔑まれることも多々ある。

この点が物語に現実味を持たせている部分でもあり、例えば「ドラゴンクエスト」のような典型的な勇者のおとぎ話ではないことは一目瞭然だ。

ある者にとっては英雄でも、他方では煙たがられる存在、それがウィッチャーなのだ。

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それからファンタジーに不可欠な要素、剣と魔法についても本作はしっかりと網羅しているのだが、ウィッチャーが使用する印と呼ばれる魔法の類が、他のRPG系作品に比べると非常に少ないのが印象的だ。

いや、むしろ少なすぎると言った方が適切だろう。

具体的には、アード、イグニ、イャーデン、クエン、アクスィーの5つの印(魔法)しか使えないのだ。

しかしこれには恐らく開発者の狙いがあって、戦闘時における操作の煩雑さを軽減させるのはもちろんのこと、思想的に魔法に対するスタンスが「Skyrim」など他作品とは明確に異なることを示している。

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そもそも、魔法とは何だろうか。

誤解を恐れずに言えば、魔法とは人の願望である。

目の前の敵が火に弱いなら、今ここで燃やしたいという願望。

目の前の相手が言うことを聞かないなら、今ここで言う通りにさせたいという願望。

魔法とは、これら願望を呪詛のように明文化したものであり、ファンタジーにおいてはプレーヤーを非日常的な空間に誘う特効薬的な役割を果たしている。

今回、ゲラルトはたった5つの印(魔法)しか使えないが、これは選択と集中の結果でもある。

大きく分けると、衝撃波と炎を駆使する戦闘魔法、結界とバリアを張る防御魔法、そして相手の精神を操る催眠術的な補助魔法、この3つが柱となっている。

これらはどれもウィッチャーの願望を具現化させたものばかりだ。

恐らく、長年の経験と先達からの教えにより、この数に落ち着いたのであろう。

逆に考えると、ウィッチャーはこうした魔法の他にも剣術や体術、それから錬金術など文武両道を会得しなければならないという、彼らの修行の壮絶さを物語るトピックでもある。

ちなみにウィッチャーにはそれぞれ流派があり、本作ではグリフィン流、猫流、そしてゲラルトが所属する狼流の3つが登場する。

もしかすると他流派においては印(魔法)の数も違ったりするのかもしれない。

そんな憶測が容易いほど、ウィッチャーとは長い歴史のある職業ということが推測出来る。 

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このように、ウィッチャーとは魔法使いでも剣士でもなく、モンスタースレイヤーに特化した総合職という立ち位置がしっくりくる。

これを裏付けるかのように、本作では魔法使いという専門職が登場する。

しかし、ある時は寵愛され、ある時は魔女狩りのような扱いを受ける魔術師達においては、およそ時代に翻弄されている印象も受ける。

これは中世ヨーロッパにおける魔女狩り騒動にヒントを得ていることは間違いないが、果たして民衆から忌み嫌われることもあるウィッチャーにとって、女魔術師達と意気投合するのは自然の摂理なのかもしれない。

つまりそれは、マイノリティ同士による結束の強さという事実。

無論、その人並み外れた強さ故に、ウィッチャーや魔術師が社会的弱者という位置付けではないのだが、少数派として集団に埋没しない存在であることは、ゲーム的にもキャラが立って好都合と言える。

私はまだ中盤の段階だが、このようなマイノリティのウィッチャーや魔術師を主軸に置いた物語の展開は、極めて成功していると言わざるを得ない。

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ところで、戦闘について、本作は所謂RPG的なパーティー感は控えめである。

どちらかと言えば「Skyrim」のように、基本はソロでの攻略がメインとなる。

これはウィッチャー自体が剣も魔法も達人級であるため、その他の専門職を必要としていないことが原因だ。

従って、RPG的な共闘カタルシス感は非常に希薄。

他作品のパーティー戦闘ではそれぞれのジョブが役割分担して敵と戦うが、そういった戦略的な楽しみ方は本作ではあまり味わえないので注意が必要である。

もちろん、オンライン要素もないので孤高のオフラインゲームと認識するのが得策だろう。

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よりファンタジー的な世界観を構築する上で、武器や防具といった装備の存在は到底無視することの出来ない要素だ。

本作もそれは同じで、序盤から剣や鎧といった各種装備を集める楽しさがある。

これがFPSなら着用している装備など全く画面に映らないところだが、三人称視点である本作は、装備ごとに変わる見た目も多種多様であり、ビジュアル的にも没入感を高めているのは素直にありがたい。

RPG系の作品は気付けば50時間以上のプレイに及ぶことも珍しくなく、中だるみを防ぐためにも、こうした見た目の変化は特に重要だと思う。

その他、髪型や髭なども数は少ないがいつでも変えることが出来るのも地味に嬉しい。

ゲームの面白さとは、カスタマイズをどれだけプレーヤーに提供できるかがテーマとも言え、今やPS4Xbox Oneといった高品質の現行機のおかげもあり、この点においてはグラフィック同様にゲームエンターテインメントの進化を肌で感じる部分と言えるだろう。

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最後に、再び世界観及び物語の話に戻るが、本作の主人公の目的は同じウィッチャー職であるシリという女性を探すこと。

このシリという女性、実はゲラルトにとっては娘同然の存在でもあり、彼女に危険が迫っているのを知った以上、必ず見つけ出して守るという保護者的な義務感がそこにある。

その過程において様々な人間模様があり、一方では抗争に巻き込まれたりするなど、メインとなる物語は随所において起伏のある展開を見せる。

特に本作のサブタイトルにもなっているワイルドハントの存在が謎めいて興味深い。

これは人間族でも非人間族でもない、魔族と呼んでも差し支えないような薄気味悪い妖気漂う連中だ。

そのワイルドハントの目的は、古いエルフの血を継ぐシリを拿捕すること。

拿捕した後の利用手段が未だ不明だが、恐らくこれは物語の展開とともに次第に明らかになっていくだろう。

加えて、シリはニルフガード帝国にも追われており、それが物語を若干ではあるが複雑化させているのも否めない。

ただ、こちらも後半になるにつれて事実が明らかになっていくだろう。

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とにかく、ゲラルトは一刻も早くシリを見つけ出し、保護もしくは共闘する必要に迫られている。

これはウィッチャーとしての仲間意識と、養父と養女という親子感情が互いに交差した上での義務的行動となる。

このゲーム、小説が原作だけあって全てを理解するには相当な読解力が必要だと思うが、主人公ゲラルトの動機は極めて単純明快であり、ひとまずそこに救われているのも確かだ。

つまり、私のように前作を途中で辞めてしまったプレーヤーでも、スッと物語に入っていける懐の深さ。

最後にこの点を強調しつつ、今後もマイペースにプレイ日記を更新していきたいと思う。

まだまだ、先は長い。

 

つづく