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【ドラマ】オカルトホラーとして傑作の呼び声高い、韓国版エクソシスト「 客-ザ・ゲスト-」の感想【ネタバレなし】

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「客-ザ・ゲスト-」(2018年)★★★★★

 

人間だけが「死」の概念を理解して生きている、なんてのは人間側の傲慢さと欺瞞に満ち溢れた勝手な憶測にすぎないと僕は思っています。

 

けれどもそうした「死」の概念があるからこそ、ホラーというエンタメが存在し、今も人気コンテンツの1つに数えられています。

 

例えば死後の世界に対して、皆さんはどういう印象をお持ちでしょうか。

 

僕の場合、憧憬と畏怖という2つの相反した印象を持っています。

 

要するに、死後の世界には人智の及ばない、ただならぬ雰囲気を感じながらも、大好きだった故人にもしかして会えるのではないかという憧憬にも似た感情。

 

こうした親しみやすさと妙な恐怖感が表裏一体となっているのが、このジャンルの特徴とも言えるのではないでしょうか。

 

言い換えれば、限りなくフィクションでありつつも現実性を伴うエンタメ、、、まずはその前提に立ちながら、今回は韓国版エクソシストとして評価の高い「 客-ザ・ゲスト-」の感想を残しておきたいと思います。

 

 

2021年1月現在、本作はNETFLEXにて視聴可能ですが、元々は2018年の9月から11月まで、韓国で放映されたTVドラマとなります。

NETFLEX版では全16話というエピソードの量もさることながら、各話60分というボリュームにつき、非常に内容の濃い作品となっております。

そのあらすじは各媒体にて各自で確認してもらうこととして、平たく言えば、一時期アメリカで流行った「スーパーナチュラル」に近い作風とも言えます。

要するに、悪霊退散系の心霊サスペンスドラマ。

 

 

本稿の記事タイトルには「エクソシスト」という言葉を使わせてもらいましたが、その理由は単純明快です。

本作の見所として、悪魔祓いのシークエンスがとても面白いからに他なりません。

特に、被憑依者役を演じる役者陣の鬼気迫る演技。

これがもう、ため息の出るほど素晴らしいです。

まさに鬼の形相たる悪霊の如き演出には、ホラー好きの自分も圧倒されまくりでした。

 

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こうした悪魔を取り扱ったジャンルはキリスト教圏、つまり欧米におけるエンタメ化が一歩も二歩も先を行っています。

しかしながら、欧米に比べると宗教的価値観に疎い我々日本人としては、サタンとかデビルとか言われてもいまいちピンと来ないものがあるはずです。

(もちろん毎週日曜日に教会に足を運んでいるような、敬虔な方を除いて。)

 

本作が優れているのは、まさにそこにあります。

つまり、土着的な心霊とキリスト教の悪魔という存在を混然一体としたことで、日本、いやアジア圏に住む我々にも十二分に説得力のある作品に仕上げてきたのです。

 

心霊や悪霊、、、それは日本では地縛霊とも呼ばれます。

僕が敬愛する稲川淳二師匠の名前を出すまでもなく、こうした怨霊の存在は日本の歴史からも切っても切り離せない。

従って、全編に渡って「エクソシスト」的な内容でありながらも、怪談話のようにどこか親近感を抱きながら鑑賞することが出来る、奇跡的なバランスを体現した作品と言えるでしょう。

 

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果たして、本作の物語は「客」である悪霊を追うことで進行します。

また、関連する事件は1つではなく、いくつも現れます。

そして毎回のエピソードがクリフハンガー仕立てなので、続きが気になって仕方ありません。

ホラーやスリラー、そしてサスペンス好きなら間違いなく、本作はお勧めと断言出来ますね。

 

というのも、このドラマ、1話目から抜群に面白いんです。

僕はエンタメ作品を推し量る上で、イントロダクションを特に注視します。

映画でも、ゲームでも、最初の30分が面白くなければ、あまり期待は来ません。

本作はその点においても非常に優秀なイントロダクションを奏でています。

(ネタバレではありませんが、本作で最も重要なエピソードは1話目です。)

 

また、劇中において様々な場面でトリックやギミックを仕掛けていますし、テンポの良い編集能力の高さは果てしなく狡猾。

ホラーを語る上で欠かせない、緊張と緩和のタイミングも上手く、加えて主要登場人物に嫌なキャラも見当たりません。

ドラマ作品としての完成度の高さから言えば、日本でいうところの「半沢直樹」に匹敵するのではないかと思ったりもしました。

 

 

先程から褒めてばかりの感想で恐縮ですが、正直、褒めるところしか見当たりません。

各エピソード、各事件においても、韓国産らしく、しっかりと「家族」にテーマを置き、人間の内面にフォーカスしていく過程もナイスです。

そもそも韓国映画の面白さって、そういうエモーショナルな部分に帰依するところが多いじゃないですか。

どんなにスケールのデカい話になっても、人間社会の最小単位である、家族の人間模様が必ず描かれますよね。

実際のところ、本作についても家族の愛憎がきめ細かに描かれています。

良くも悪くも、そこにエモーショナルを求める国民性というのがあるのでしょう。

 

 

DJらしいことを言えば、劇中に流れる音楽も好印象です。

いわゆる劇伴という名のBGMの話になりますが、人間の内面に迫った情緒あふれる世界観の構築に、とても大きな影響を及ぼしています。

音楽のチカラというのは、やはり映画やドラマという作品に必要不可欠ですね。

メランコリックなメロディが印象的なテーマ曲を含め、サントラがSpotifyにもありますので、ファンは要チェックかと思います。

 

 

本作については、二転三転していく話の展開が面白いところでもあるので、ネタバレは回避しています。

作品を覆うテーマが「悪は人の心から生まれる」というものですから、出来れば事前情報を入れずに、この人間関係のパズルを堪能して頂きたいですね。

 

例えば、ジャンル的に同系統にある「コクソン」や「サバハ」に良い印象を持っている方なら、間違いなくハマれる作品かと思います。

特に「サバハ」の世界観は僕の好きな「ナインスゲート」に通じるものもあって、強く印象に残っています。

未見の方は「サバハ」から鑑賞するのも悪くないと考えます。

 

 

正直な話、こうしたゴシックホラーな雰囲気をアジア圏で表現するのはとても大変なことだと思うんですね。

これはキリスト教の信者が多い韓国だからこそ、体現出来た作品なのでしょうか。

もちろん、日本映画には日本なりの良さがありますし、単純比較は出来ません。

けれども、ホラーというジャンルに関しては、本作のおかげでかなり差をつけられてしまったように思います。

(未だに「貞子」が消費されている日本のホラーエンタメって一体何なんでしょう?)

 

貞子

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「 客-ザ・ゲスト-」がテーマにしているもの自体に、新鮮さはありません。

けれども、その演出力、そして脚本力がまるで新機軸の作品のように鮮烈な印象を残しました。

バディものとしても楽しめますし、刑事ものとしても秀逸でした。

 

ただ個人的には、もう少し社会派としてのメッセージ性、つまり政治や世間に対するアイロニーをふんだんにちりばめてくれたら、、、恐らく神懸った作品に化けていたと想像します。

もしも続編が製作されるのであれば、そうした現代社会の病巣に鋭く切り込んで欲しいものですね。

 

 

それでも、、、素晴らしいシーズン1でした。

最大級の賛辞を込めて、神父の祈りの言葉で本稿を締めたいと思います。

 

父と子と聖霊のみ名によって。

アーメン。

 

客 -ザ・ゲスト- DVD-BOX1

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