【FPS】戦争は、その経験なき人々には甘美である。Metro: Exodus レビュー【Xbox One/PS4】
「Metro: Exodus」★★★★★
現在のパンデミックな世界情勢は、ある意味で戦時下と言えます。
日本に住んでいると緊張感が希薄していて、通常の日常生活と大差なかったりもしますが、ゲームの世界は相変わらず凄いですね。
ここまで没入させますか、っていうぐらいに中毒性の高い作品が増えました。
これは単純に4Kなどのグラフィックの恩恵によるところが大きいです。
今回ピックアップするMetro: Exodus(以下、メトロ・エクソダス)も同様で、シリーズを通して最高レベルの仕上がり。
クリアレビューとして、少し解説しておきます。
- 1.ポストアポカリプスの名に恥じない舞台設定
- 2.小説を原作とした巧みなストーリーライン
- 3.FPSらしい直感的な操作性、しかし挙動は緩慢
- 4.世界は狭いが、探索は楽しい
- 5.魅力的な仲間たち、しかし主人公は孤高の人
- 6.まとめ
1.ポストアポカリプスの名に恥じない舞台設定
この作品はシリーズ化しておりまして、今回で3作目となります。
当初より、核戦争後の舞台を描いておりまして、これまではタイトル通り「地下鉄」が主なフィールドでした。
本作では、エクソダスというサブタイトルにもあるように、地下鉄からの「出国」がテーマとなっています。
必然的に地表のフィールドが舞台となりまして、ロシアの広大な大陸を転々としていきます。
特に雪景色の描写は凄まじいものがありました。
建造物にしても、退廃という言葉では言い尽くせない、果てしなく死の世界が目の前に広がっています。
残留している放射能の影響も含めて、画面から迸る息苦しさはシリーズ随一と言ってもよいでしょう。
2.小説を原作とした巧みなストーリーライン
ご存知かもしれませんが、このシリーズは原作となる小説が存在します。
従って、ストーリーラインはもちろん、各登場人物の描写も至極丁寧です。
確かに前作や前々作を先にプレイしておくべき内容ですが、物語そのものは常に目的と動機付けがリンクしていますので、本作からプレイしても違和感はさほど感じないはず。
加えて、主人公の行動に疑念を持つ場面も少ないと思います。
この点は非常に大事な部分です。
一本道のキャンペーンではありますが、箱庭にありがちな「おつかい的」な煩わしさは特に感じませんでした。
つまり、目的と動機付けの演出が上手いということです。
ただ、サブクエなどのやり込み要素が少ないので、各キャラクターに愛着が湧くまでは時間を要すると思います。
3.FPSらしい直感的な操作性、しかし挙動は緩慢
FPSと言えば、CoDやBFなどの戦争系リアルシューター作品が代名詞的存在ですが、それらに比べて本作の挙動は極めて緩慢です。
これが結構なストレスとなっているのは否めません。
というのも、クリーチャーは四方八方から襲い掛かってきます。
そうした場面で素早い視点移動と射撃が出来ないのは、自己の技術の向上を実感することが出来ず、ゲーム本来のカタルシスを得にくい。
相対的に、人間の敵に対してはステルスシューターとして戦うことを強いられていきます。
この点に本作の齟齬があって、ステルス戦闘にリソースを割くなら、キッチリとその方向性に仕上げた方が良かったと思います。
つまり、二兎を追う者は一兎をも得ず。
FPSとしての完成度は、正直申し上げて、中途半端と言えるでしょう。
4.世界は狭いが、探索は楽しい
本作はシリーズの中でも特にオープンワールド的なマップ構造となっています。
すでに述べた通り、素晴らしく退廃的な世界観を構築しているので、寄り道は本当に楽しいです。
しかしながら、サブクエも収集要素もほぼ皆無の状況でして、コレクタブルな食い足りなさは残ります。
廃墟など、マップにおけるギミックも単調ですし、僕自身、このまま2周目をプレイするかどうかは微妙なところ。
ただ、世紀末的な退廃好きが見たかった景色がそこら中に展開されているので、初見プレイは本当に楽しめると思います。
水面の表現など、ある意味で新海誠のようでした。
5.魅力的な仲間たち、しかし主人公は孤高の人
各登場人物において、仲間となる戦友たちは本当にナイスガイばかりです。
日本語吹替というフルローカライズの恩恵もあって、感情移入も容易い。
やはり原作がベースとなっていることで、物語にも奥行きを感じますね。
ただ、プレイ中は常に孤軍奮闘状態。
いくつかの場面でランデブーすることはあっても、基本はソロでの攻略となります。
個人的に、コンパニオンのシステムはあまり好きではなく、ソロとしての孤独感を味わいたいので、本作の仕様それ自体に文句はありません。
ただ、物語が充実しているだけに、もう少し仲間と一緒に戦うシークエンスがあっても良かった気がしますね。
6.まとめ
総合的に、ゲームオブザイヤーに匹敵する大作です。
FPSというシューター要素については不満が多く、武器のカスタマイズやアイテムの拡張性も平凡です。
そもそもの武器の種類にしても、ボダランの足元にさえ及びません。
レベルアップやスキルアップのシステムなども一切ありませんので、プレイヤーの能力は常に一定であり、最後までシューター的なカタルシスは得られませんでした。
なぜ成長要素を入れなかったのか、未だに理解に苦しんでいるところです。
しかし、奥行きのあるストーリーラインと、それを支える高画質なグラフィックのおかげで、極めて没入感の高い作品となっていることは確かです。
正直申し上げて、この景色をFalloutで見たかった、そんな気持ちさえ抱かせます。
冬のみならず、砂漠の乾燥地帯や紅葉ひしめく森林地帯、そしてシリーズお馴染みの地下鉄構内など、様々なフィールドを体感出来る楽しさは本作のハイライトとも言えるでしょう。
出来ることなら、4K環境でぜひ味わって欲しいと思います。
(サントラも良かったので、リンクを貼っておきますね。)
総合評価:90点