【Pops】これぞ新生KIRINJIの決定版!全方向にアップデートされた日本語ポップスの大傑作「cherish」発表!
KIRINJI「cherish」★★★★★
デビューから20年を数えるベテランバンド、KIRINJI(キリンジ)が最新作となるアルバム「cherish」(14作目!)を発表しました。
ファンの方には説明不要ですが、元々は兄弟ユニットでスタートしたバンドです。
それが2013年に弟の堀込泰行が脱退し、兄の堀込高樹がそのまま継続する形で今に足ります。
(界隈では2013年以前をキリンジ、2013年以降をKIRINJIと表記して区別しています。)
果たして、肝心の音楽性はどうなったかと言いますと、やはり2013年を起点に大きな変化が起こりました。
キリンジの頃はエバーグリーンでアコースティック系のサウンドが印象的でしたが、KIRINJIになってからは明らかに現代のポップカルチャー、特にエレクトロ方面に近接しているのがよく分かります。
本作「cherish」もその方向性にブレはなく、極めてモダンなポップスを実践しているあたりに、正直言って、今の邦楽市場においてもエポックメイキングな作品だと思いました。
何はともあれ、MVから最新音源をチェックして頂きましょう。
どうですか、このバランス感覚。
引き算思考のアレンジ、選び抜かれた音色、そして歌メロと日本語歌詞の不敵な融和。
つい先日、大麻で逮捕されちゃった、鎮座DOPENESSのラップも違和感なくハマっています。
(違法薬物やってそうな人が本当にやってたパターンって、落胆というか意気消沈してしまうので勘弁して欲しいです。そりゃカルチャーとしての薬物の存在性は否定しませんけど。)
個人的には、Mondo Grossoの「ラビリンス」に匹敵する衝撃でもありました。
どちらの音楽も、日本独自の土着的でメランコリックな郷愁性を残しつつ、それをElectronicな文脈で表現するという、極めてオーセンティックかつモダンな手法ですね。
かつてのJポップ全盛期では、avex主導によるユーロビートやトランスといったElectronicの文脈でヒット曲が量産されました。(TKファミリー、そして浜崎あゆみなどが代表的です。)
それが近年はEDM系のBigroomなサウンドがビルボードを席巻し、その反動で今はチルポップ系のAOR的グルーヴが頭角を現しているのはご存知の通りです。
そこには1980年代以降のシティポップやシンセウェイヴなどの時代回帰的な現象もあり、レトロとモダンが混在しているかのような、極めてエモーショナルで浮遊感のある世界観が1つの特徴にもなっています。
このKIRINJIの最新作においても、往年の渋谷系カルチャー以降を背負ってきた自らの歴史的背景と、今のポップスの潮流が高次元で調和されており、非常に価値ある作品となっております。
加えて、バンド畑の視点から産み出されるElectronicなグルーヴは独特の極みで、これについては既存のDJ&Club Soundとは確実に一線を画します。
普段からクラブカルチャーに明るい方も、この辺をぜひ聴き比べて頂きたいなと思うわけです。
余談ですが、くるりの「ワールズエンド・スーパーノヴァ」を初めて聴いた時の高揚感にも匹敵するような、ちょっとしたデジャヴも感じた次第です。
そして今の邦楽界から、このような傑作が出てきたことにも正直驚きました。
間違いなくたぶん、邦楽の未来は明るいです。