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【Deep Trance】プログレッシブハウスの重鎮、Nick Warrenが新作「Balance presents The Soundgarden」で魅せたクラブミュージックの可能性

Balance Presents the..

Nick Warren「Balance presents The Soundgarden」★★★★★

Way Out Westの活動でも知られる、DJ界のレジェンドNick Warrenが新作となるMix作品を発表しました。

すでに50代の齢に突入している彼ですが、そのMixセンスと構成の妙は衰え知らず。

物語性を強く意識した、恍惚な趣きのある世界観には脱帽です。

古くから、Global UndergroundシリーズにおいてProgressive Houseの洗礼を受けてきた僕にとっても、近年まれにみるエポックメイキングな作品として非常に感銘を受けたところでございます。

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さて、音源をチェックしてもらう前に、本作のリリースに至るまでの彼の言質を確認しておきたいと思います。

ちょうど今から15年近く前の記事が残っておりましたので、そちらを引用してみます。

(時期的には、DJ Mix作品「Global Underground: Shanghai」(2005年)をリリースした頃です。ちなみにこれも傑作ですので要チェック。)

Global Underground: Shanghai

・(Mix作品の収録内容について)世界中をツアーして回ってると、自宅で楽曲制作をしてるような若いアーティストから、たくさんの素晴らしい音楽を受け取るんだ。だから、そういう若者が集まれるような場をつくりたかったのさ。

・(Electro Houseなどの新しいサウンドについて)みんな「すごくいいよね!」って口を揃えて言うけど、実際はほとんどが同じような音なのさ。エレクトロ・シーン全体があまり進化していないしね。(中略)10分も古いヤマハのシンセだけ聴き続けるなんて退屈だよ。進化しないとダメなんだ。もちろん中にはいい音楽もあるけど、探す努力をしなくちゃいけない。

・(自身の引退について)全く考えていないんだ。だから今でもこうして続けてるのさ。今でもこの仕事が好きなんだ。「サウンドトラック制作に移行する」って言う方が簡単なのかもしれないけど、まだこの先のことについては全く考えてないんだ。だからDJに飽きて、満足な仕事が出来ていないと思ったら、ストップすることになるんだろうね。

古い記事とはいえ、現在でも通用する多くのことが示唆されています。

特にDJ諸氏の皆様には、改めてこの重鎮の言葉の意味を咀嚼する必要があるのかもしれません。

これもDJとProducerの両立を実現しているNick Warrenならではの金言だと思います。

 

それでは最新作「Balance presents The Soundgarden」のレビューに移りましょう。

本作は2枚組の構成となっております。

(Disc 1)

(Disc 2)

往年のProgressive Houseというよりは、Melodic House & Technoに近い構成になっているのがお分かりかと思います。

元々、彼のDJスタイルはエモーショナルな要素とカッティングエッジな要素が違和感なく同居しているところに大きな特徴がありました。

言うまでもなく、Progressiveという言葉の意味は、進歩的で革新的であること。

郷愁誘うレトロモダンではなく、極めてフューチャリスティックな姿勢で音楽と対峙しているのが、今回の選曲からもよく分かります。

こうした常に進化を求める姿勢が、Nick Warrenの存在意義にもなっていて、他のレジェンド達とも一線を画す個性となっているのです。

さて、タイトルにあるBalanceとはオーストラリアのメルボルンを本拠地とするレーベル名です。

(オーストラリアは昔からProgressive Houseの勢いがあることでも知られています。)

日本ではクラブ客層の高齢化もあって、なかなか当時の盛況っぷりを再現出来ずにいますが、いずれまたこうした世界観の音楽は必ずや評価されることになるでしょう。

ちょうど、11月30日にはこのジャンルの巨匠的存在でもある、Airwaveの来日も迫っています。

国内において、Progressive Houseを誰よりも理解しているDJ Tokunaga氏とDJ NECO氏の両名を中心としたイベントですので、内容は折り紙付きです。

同様に、現在のクラブシーンで最も集客力を持つオーガナイザーの1人、AJ氏も関わっているイベントですから、これはもう、2019年の下半期を代表するTranceイベントになることは間違いありません。

(詳細については、以下のリンク先などでご確認ください。)

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余談ですが、音楽とは、空間芸術であり、即興芸術でもあります。

特にクラブミュージックは、その両方を同時に満たす可能性を秘めています。

Nick Warrenの新作は、世界観のみならず、音楽本来の芸術性にも焦点を当てたところに、とても大きな意義があると思うんですね。

彼のように、ベテランにはベテランなりの品位と貫録がありますが、それはまた、ビギナーだった駆け出しの頃からの様々な経験が蓄積された結果とも言えます。

故事成語に「老いたる馬は道を忘れず」という言葉があるように、自分の好きな音楽にいつまでも正直であること、果然これが肝要と言えるのではないでしょうか。

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