【書評】労働基準監督署のことを労基署と略す人に特にオススメ「労基署は見ている。」
原論「労基署は見ている。」★★★★☆
元労働基準監督官(現在は社労士)による実体験あふれた回顧録的な本です。
巷では新書ブームとか言われて久しいですけど、こういう元~の肩書のある人の本は大抵面白いですね。
そりゃ脚色もあるんでしょうけど、実体験に勝るものはありませぬ。
特に監督官が日常的にどのような仕事をしているのかという素朴な疑問が解消されました。
中でも「監督官は一人親方」というのは面白い表現だと思いました。
これは監督官が特別司法警察職員であることにリンクする話ですが、世間一般的には意外な実態といったところでしょうか。
しかしながら、行政の人手不足は今に始まったことではなく、悪質の優先順位で臨検に向かっている事実にはやっぱりか、という気持ちです。
もっと監督官を増やして全ての事業場を臨検して欲しいぐらい、日本の労働環境は悪化する一方だと感じます。
その臨検についての記述は具体的ではありますが、果たしてこの1冊で世の社長さんの参考になるかどうかは不明。
そこは社労士なり専門家の出番ですよという伏線もあるんでしょう。
何にせよ、日頃から労基を守っていればいいだけなのに、法律を守れば利益は出ないと自信満々に答える事業主が多いのも事実ですから、そこに警鐘を鳴らす意味でも意義のある1冊かと思います。
ちなみに労働基準監督署を「労基署」と呼ぶのは一般の方。
こうした労働界隈で仕事している人は「監督署」と呼びます。
その辺の細かい言い回しについても言及があるので面白いですよ。