【Synthwave】The Midnightの夏は終わらない
The Midnight「Endless Summer」★★★★★
先日紹介したばかりのシンセウェイブ、The Midnightがついにフルアルバムを発表。
結論から申し上げて、全12曲、捨て曲なしの仕上がりである。
これぞ傑作。
全曲聴き終えて最初に出た言葉はこの一言だった。
前回のレビューにもあるように、全体的には80sを意識したサウンドでありながら、モダンなアレンジを随所に加え、まるでNu Synth Waveと形容してもいいような、所謂レトロフューチャーを確信犯的に演出する製作姿勢が好印象だったThe Midnight。
前回紹介したEP同様、本作においてもノスタルジックで哀愁感たっぷりな美旋律の洪水が健在であり、これは日本古来から永々と続く「もののあわれ」をコンセプトに据えた結果でもある。
このような美的精神性を遠く離れたアメリカの西海岸で実践するとは、まずもって驚きを隠せないのだが、いやはやLAとは今なお音楽市場に大きな影響を与えているのだと私も再確認した次第である。
すでに全曲捨て曲なしと冒頭で断言したばかりだが、特に「Sunset」や「Jason (feat. Nikki Flores)」「Synthetic」「Nighthawks」などにおけるVocal Trackの出来が非常に良く、シングル曲としてみても十二分にチャートを狙えるクオリティであることは否めない。
もちろん、「Vampires」や「Crockett's Revenge」などのインスト系楽曲においても、泣きのサックスサウンドが効果的に使われ、涙腺崩壊を促す郷愁感たっぷりなアレンジが良い意味で憎たらしい。
例えば浜辺での夕陽や、日が暮れかけた都市の夜景など、リスナーが思わず情景描写してしまうような、甘美な想像力をかき立ててくれる内容に自然と笑みがこぼれてしまう。
この完成度の高さ。
まさに満を持して、発表した作品だと思う。
今夏の日本は例年にないほどの暑さを記録しているが、このThe Midnightのおかげでとてつもない清涼感を味わうことになってしまった。
これなら夏嫌いの私でも何とかこの残暑を切り抜けられそうだ。
そういう意味でも、最大級の賛辞を送りたいと思う。