【Synthwave】The Midnightが実践する「もののあわれ」
The Midnight「Days of Thunder」★★★★★
80年代をルーツとしたシンセポップが大好物な私。
先日紹介したFM-84はいかがだったろうか。
刺さる人にはストレートに刺さったのではないかと推測する。
さて、そんなノスタルジックでロマンティック、尚且つドリーミーでプリミティブなシンセポップ系アーティストを今宵も紹介したい。
The Midnight。
奇しくもFM-84と同じく、アメリカは西海岸出身のアーティストである。
まずは2014年に発表された「Days of Thunder」を聴いてもらいたい。
恐縮だが、これは私が求めるニュースクールなシンセポップの1つの完成形である。
奥行きのあるシンセサウンドはもちろん、コード進行はひたすら哀愁系をなぞり、そこに色気のある男性Voが違和感なく馴染んでいく。
加えて、決して速くはない曲の速度に反比例するかのように、言葉では言い尽くせないドライブ感がこれまた素晴らしい。
80年代、というとアメリカンで大味な印象を持つことも少なくないが、The Midnightの楽曲に関しては全く別物である。
その叙情的なメロディに代表されるように、緻密で繊細なアレンジは、我々日本人が最も好き好む部分ではないだろうか。
ひとまず率直な感想を残しておきたい。
まずは1曲目の「The Years (Prologue)」だが、まるで映画のオープニングを飾るようなクオリティに驚かされる。後半からBOOWYの「Just A Hero」のようにディレイの効いたドラムが鳴り出してビルドアップしていく展開もナイスアレンジである。
2曲目「Gloria」は冒頭から哀愁的美旋律が炸裂。80年代シンセポップによくあるリズムパターンだが、全体的にプリミティブなサウンドに包まれているのが印象的。後半にKeyが上がっていく流れも心地良い。
3曲目「WeMoveForward」は昨今のProgressive Houseを意識したかのような設計。そもそもProgressive House界隈にはClaes RosenなどNu Discoから影響を受けたアーティストも多く、ひょっとするとこの曲はDJ Mixにも違和感なく使えてしまうのかもしれない。
4曲目はタイトル曲でもある「Days of Thunder」。アラフォー世代には何とも懐かしい響きである。トニースコット、何で死んだんや。。。それはさておき、本作では最も80年代の雰囲気を体現した楽曲だ。サックスのソロパートが素晴らしくて思わず泣けてしまう。世のおっさんたちは安心してここで泣いて欲しい。
5曲目「Kick Drums & Red Wine」も哀愁的なシンセリフが印象的な1曲。かれこれ5年前ほどに、Fear of TygersやDiamond CutなどからNu Discoの洗礼を受けた私としては、大変美味な逸品。途中トランス系楽曲にあるようなシンセフレーズもあり、まさにレトロモダンなアレンジと言えるだろう。
終曲「Los Angels」はThe Cranberriesも真っ青なドリームポップに仕上がっている。最後の最後で自らの懐の深さを提示してくるあたり、このThe Midnightは相当な確信犯である。しかし、それが少しもあざとく見えないのは、80年代に対する真摯な姿勢にあるのかもしれない。
以上、駆け足で感想を残してみたが、本作は曲数も少なく、Bandcampでは5ドルで入手することも出来るので、ぜひ興味ある方は音源を買って応援してもらいたいと思う。
最後に、彼らのプロフィールにあった文章を原文ママで掲載しておく。
なぜこのサウンドが私達日本人の琴線に触れるのか、その答えを探すヒントになるはずだ。
「Japanese term "mono no aware" means basically, the sad beauty of seeing time pass. This is our attempt to put time under glass.」by Tim McEwan & Tyler Lyle (The Midnight)
The Midnight - Days of Thunder
The Midnight - Vampires (official video) (2016年発表の新曲)