【Rock】One Ok Rockの品格
One Ok Rock「35xxxv」★★★★★
日本で純粋培養されたOne Ok Rockというパンクロックバンドが、本腰入れて欧米化した時、試されるのは私達日本のリスナーである。
そういう意味で、本作「35xxxv」はOne Ok Rockにとって歴史の分岐点とも言うべき重要な作品と言えるだろう。
何と言っても欧米化への本腰の入れ方が本気なのだ。
プロデューサーにあのJohn Feldmannを迎えているのである。
この名前にピンと来た方はよっぽどのパンクロック好きだと思うが、何を隠そうGold FingerのVocalを務めていた人物である。
このGold Finger、当時はメロコアが一世を風靡している時期でもあり、出せば売れる環境が整っていたとはいえ、スカを取り入れたポップパンクのスタイルは新鮮で爽快だった。
未聴の方は今からでもぜひ名曲「Here In Your Bedroom」を参照して欲しいと思う。
Operation IvyからRancid、そしてVoodoo Glow Skullsなどが築いたスカコアという音楽成分を上手く取り込み、サンタモニカ出身のGold Fingerらしい陽気で多幸感あふれるサウンドが味わえるはずだ。
プロデューサー業としてはThe Usedでの仕事が評価され現在に至るが、自らパンクロックを体現してきた人物が日本の著名なパンクロックバンドをプロデュースする、、、当時バンドマンとして活動していた自分にとっても、これはまさに感慨深いものがある。
そこで気になる本作の内容だが、まずは1曲目「3xxxv5」から5曲目「Mighty Long Fall」まで一気に聴いてみることを推奨する。
良い意味で、和洋折衷タイプの21世紀型パンクロックの姿を確認出来ると思う。
これは音楽に歴史的参照が必要かどうかという問いに対して、明らかにYesという返答をOne Ok Rock自らが回答した好例である。
流石にGold Fingerの時代を彷彿とさせる楽曲は少ないが、2000年代以降の、例えばNew Found GloryやSimple Plan、Blink-182、そしてGreen DaやAnberlinなどのポップパンク勢が得意とする曲展開を忠実に取り込み、あくまでもOne Ok Rock仕様に巧妙にアレンジされている点が素晴らしい。
特にミディアムテンポで聴かせる「Mighty Long Fall」と「Decision」の出来は海外パンクロック勢と全く遜色のない仕上がりとなっており、日本のバンドもついにここまで来たのか、という風格さえ漂わせる、とても品格に満ちた内容だ。
これは先に述べたプロデューサーのJohn Feldmannの存在も大きいと思うが、バンド自身の成長を如実に表すものであり、本作を製作する前に行った海外ツアーでの経験が存分に生かされている模様だ。
また、過去作では曲タイトルに日本語が混じるケースも見受けられたのだが、本作では全て英語に統一され、バンドの方向性も一段と明確になった印象がある。
私がBOOWY世代の為、歌詞に日本語と英語が混在してもさほど違和感は感じないが、曲タイトルをハイブリッドにするのは彼らの音楽性からしてもデメリットの方が大きいと思っていた。
正直、これは英断だと思う。
(例:Melody Lineの死亡率、完全感覚Dreamer、Mr. 現代Speakerなど)
本作はそういう意味でも和洋折衷のバランスも良く、肝心の音楽性も海外パンクロックバンドの模倣に終わっていないところが素晴らしい。
長らく日本のバンドは海外進出に失敗を重ねてきたが、今回ばかりは期待せざるを得ない出来と言えるだろう。
アルバムには「Paper Planes」のように舶来志向丸出しの楽曲も収録されているが、海外の文化に安易に取り込まれることなく、日本由来の旋律やアレンジを武器に、欧米はもちろん、世界的な成功を収めて欲しいと思う。
なにしろ、終曲「Fight the night」において「俺たちは戦い続ける」と高らかに宣言した彼らである。
今後のワールドワイドな活躍に期待したい。
ONE OK ROCK - Cry out [Official Music Video] - YouTube
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